2022年2月2日、大阪市政記者クラブにおいて、記者会見を行いました。
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◇主な発表内容

<記者会見の様子>
「夢洲」では地元負担の膨張・損害賠償請求のリスク満載!カジノ誘致の賛否を大阪市民に問う住民投票を!記者会見しました2022/2
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記者会見(2022年2月2日)発言要旨
夢洲の土壌汚染・液状化対策790億円の大阪市負担問題~リスク管理会議から見るコスト増と地元負担膨張の構図

山田明(名古屋市立大学名誉教授、大阪市在住)
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◇夢洲開発、万博・IRカジノと地元(大阪市)負担膨張の構図

国家イベント財政には、いくつかの特徴があります。

イベントを誘致する段階では、誘致を有利に進めるため過大需要予測が行われ、関連費用を過小に見積もります。

誘致後は当然ながら、建設費や人件費が高騰して財政負担を強めるコスト上昇のメカニズム。

国家イベントは会場建設費などの直接的経費より、道路や地下鉄など関連事業の負担が重くなることが多く、「お祭り型公共投資」にともなう地元負担膨張の構図です。

規模の大きな事業は一般会計だけでなく、特別会計や外郭団体などを動員して実施されます。大規模な国家イベントに依存した財政は、地元自治体の債務を膨張させます。


イベント後の施設の維持管理費などの後年度負担も財政を圧迫し、外郭団体の破綻、財政危機を招くことになります。

先の東京五輪・パラリンピックでも問題になっていますが、大規模な国家イベントは、市民生活に影響を及ぼします。


2025年予定の大阪・関西万博、その後に誘致をめざすIRカジノについても、当初より関連事業費が膨らみ、地元(とりわけ大阪市)負担膨張の構図が明らかになりつつあります。

大阪湾の人工島である夢洲の特性が、建設費の膨張に拍車をかけています。


ここでは、大阪市のIR事業用地の790億円負担問題に焦点をあてて簡単に報告します。

昨年12月21日の大阪市戦略会議(市長・副市長らで構成)で
「IR事業用地の適性確保について 大阪市負担の考え方及び概算負担額、負担の枠組み等」
が決定されました。

会議録から、副市長とIR推進局長とのやり取りは注目されます。
(これまで 大阪市の方に瑕疵担保責任を負わないという特約を付して契約してきたが、今回、その特約をなぜ付けないのかという内容)

大阪市がIRカジノ事業用地対策費として、約790億円を負担するのは埋立地で前例のない財政措置です。


下図は12月8日開催の大阪市大規模事業リスク管理会議で、港湾局から提出された夢洲土地造成事業の収支見込みです。

夢洲の土地関連費用1578億円を含むもので、2076年度以降に累積資金残高はプラスに転じるとしています。
夢洲埋立会計長期見通し2201


それまでは厳しい状況が続き、港営事業会計は急激に悪化して、一般会計からの対応が不可避となります。




◇大阪市はなぜ異例の財政負担を決めたのか?

昨年2月12日に開催された大阪市戦略会議要旨には、大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域整備実施方針(修正案)について「土地契約関係等の事業条件を修正・追加した実施方針(修正案)を決定した」などと書かれています。

戦略会議では、会議要旨のあとに「議論内容」が掲載されていますが、この日の会議にはありません。市民に公開できない議論内容があるのでしょうか。それを知りたくて、情報公開請求しています。

会議の参考資料は修正案の説明用、本体、新旧対照表。新旧対照表6ページ、本事業における費用負担(2)大阪市有地の使用に係る費用は、修正前は次の3行だけでした。

「設置運営事業者は、本事業の実施に必要となる大阪市有地の使用に当たり、大阪市と事業用定期借地権設定契約の締結等必要な手続きを行った上で、募集要項等に定められた金額及び方法により、賃料等を大阪市に対して支払う。(第3-4参照)第3-4は「事業用地の権利関係及びその使用について」です。

修正後は次の5行が追加されています。

なお、IR施設を整備するに当たり支障となる地中障害物及び土壌汚染等に起因して設置運営事業者の負担が増加すると見込まれる場合は、設置運営事業者の施設計画や施工計画等を踏まえ、対応方法等について事前に協議の上、大阪市の設計・積算基準等により、大阪市が当該増加負担のうち妥当と認める額を負担するものとする。詳細については、募集要項等において示す。


戦略会議のあと、3月19日に「大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業募集要項」修正版が公表されます。
2019年12月に作成された募集要項が、戦略会議の決定を受けて修正されたものです。

募集要項11ページでは、戦略会議で修正された最後のところが、
「詳細については、事業条件書等において示す」
と書き換えられています。
これにより追加募集が実施され、事業者が決定されます。



問題はなぜ2月12日の戦略会議で、大阪市がIRカジノの土地関連費用を負担すると異例の決定をしたかです。

夢洲用地について、事業運営事業者であるMGM日本法人・オリックスと協議が続けられており、何らかの「圧力」があったのでないか。

整備に関する計画案では「公正・公平な公募手続き」を掲げていますが、それに反するような「決定」が戦略会議で行われたのではないか。
それが知りたくて、再び大阪市に情報公開請求しています。

毎日新聞12月28日朝刊にIRカジノの誘致 について、次のように書かれています。
「意思決定の詳細が、情報公開請求で入手した内部資料で明らかになった。6月29日に松井市長以下、副市長や関係部局の幹部ら約10人が液状化対策費の負担について対応を検討した。」

弁護士の意見、IR 推進局と港湾局、財政局とのやり取りも紹介されています。6月29日の幹部会議についても、情報公開請求しています。こうした経過を経て、9月の事業者決定、12月の計画案と大阪市負担が決まったと思われます。

とにかくIRカジノ誘致のために、790億円もの公費を負担する異例の決定であり、大阪市は経緯を明らかにする必要があります。

市会でも真相究明を求めたいものです。